6月に患者さまのインドまでの移動(帰国)に同行しました。
遅くなりましたが、報告します。
5月27日に神戸のクリニックの先生からお電話がありました。
現在、神戸市内の病院にがんの末期で入院しておられる70代のインド人男性が、インドに帰って療養を続けたいと強く望んでおられるとのことでした。
さっそく、5月30日にその病院にうかがって、患者さまとお会いしました。
病状のために、リクライニングの状態なら大丈夫だが、直角の座位をとるのは少し難しい感じでした。立位はとれない状態でした。
空路でのインドまでの移動は、なんとか可能と考えられました。
ご本人もご家族もふだんは英語を使っておられるようでしたが、けっこう日本語ができるので、コミュニケーションもなんとかなりそうです。
インド人のご家族が、飛行機を手配されて、6月1日に帰国するという段取りになりました。
Air India で関西空港から、ムンバイまで直行する予定でした。
ところが、その後 Air India から連絡があり、そのような病状の人を飛行機に乗せるわけにはいかないとのことでした。
ご家族が、いろいろと動いてくれて、最終的にはシンガポール航空を利用して行けることになりました。
ムンバイまでの直行便ではなく、シンガポールで乗り換える必要がありました。
乗り換えには、一旦飛行機から降りて、しばらくラウンジで休んで、また飛行機に乗り込むという手間が伴います。また、合計の移動時間はかなり長くなります。でも Air India に断られた以上、しかたありません。がんばりましょうということになりました。
6月6日朝、神戸の病院を出発しました。
同行したのは私とこひつじクリニックの男性看護師です。患者さまと奥様で合計4人での移動でした。
利用したのは、この民間救急の車です。
関空に着いたところです。
民間救急の車の中ではストレッチャーで、臥位の姿勢でした。
ここから先は、航空会社のリクライニング車いすに乗り換えました。
こんな布製の担架があって、これをずっと体の下に敷きっぱなしにして、ストレッチャーから車いすへの移動、車いすから飛行機の座席への移動などをしました。軽くて、折りたたんだらコンパクトで、耐荷重は 150kg なので、これはけっこう使えるスグレモノです。
患者さまの体重は 60kg ぐらいあったのですが、この担架は力が入りやすいので、私と男性看護師の二人でもなんとか患者さまを移動させることができました。
でも、飛行機の中での座席移動はビジネスクラスではあったのですが、けっこう狭くてやりにくかったので、乗務員にも手伝ってもらって4人で移動させたほうが安全だったかなと思っています。
関西空港発が 10:55 でシンガポール空港着は 16:40(日本時間では 17:40)でした。約6時間45分のフライトでした。
シンガポール空港発は 19:00 だったので、1時間ちょっとラウンジでソファーで臥位にならせてもらって、休んでいただきました。
シンガポールを定刻に出発し、ムンバイ着は 22:10(シンガポール時間では 0:40)でした。約5時間40分のフライトでした。
患者さまの状態は移動中、おおむね良好で、機内食もわりと召し上がってました。
ですが、ムンバイに着く1〜2時間ぐらい前から倦怠感が強くなって、落ち着かない雰囲気になってきました。
念のために、機内で点滴を始めました。そして、様子を見ながら側管からミダゾラムを少量ずつ静注しました。
無事にムンバイの空港に着きました。
入国の審査があったのですが、行列の一番うしろに並ぶのではなく、順番を繰り上げてもらいました。順番ぬかしをしたので、並んで待っている人は少し不服そうでしたが、「emergency !」と係の人が叫んでくれて、納得してもらいやすかったと思います。点滴をしていて正解でした。
空港で待っていてくれた救急車に乗り込んで、病院に向かいました。救急車にはこの病院の医師も待機されていました。
30分ほどで目的の病院に到着しました。
現地の医師や人々の英語は、かなり聞き取りにくかったのですが、重要なことは紙に書いたりして、伝えることができました。
こうして、患者さまをインドまで送り届けるという任務は、無事に完了しました。ホッとしました。
患者さまの友人の方に、空港近くのホテルまで送ってもらいました。
ホテルの入り口には銃を持った兵士がいて、車で入っていく時には止められて、前のボンネットの中をチェックされました。爆弾がないか調べていたのでしょうか。
ホテルに歩いて入っていく時にも、入り口には、空港にあるような透視装置があって、荷物のチェックをされました。ものものしいですね。
部屋に入ってからは朝までゆっくり休めました。
ホテルの窓から見た風景です。
ほんとは3車線の道路なんだと思うのですが、線が消えていて(最初から書かれてない?)、どの車もけっこう自由自在に走ります。超頻繁にクラクションを鳴らします。歩行者もけっこう無茶な横断をしたりするので、車に乗っていると、大丈夫かなとヒヤヒヤします。
よく見ると、向かいのビルの足場は木で組まれています。わりと高い建物なのに、木の足場で大丈夫なんでしょうか。
ムンバイの空港の中です。
ムンバイの空港のラウンジです。
おいしそうなものがいろいろあったのですが、時間がなかったので、ジュースを1杯しか飲めませんでした。残念。ちなみに赤い方のジュースはトマトジュースではなく、すいかジュースです。
ムンバイ空港出発は 11:45 でした。ムンバイ着は前日の 22:10 だったので、ムンバイでの滞在は13時間35分だったことになります。あまりインドらしいものも食べずに、観光もできずに終わってしまいました。せっかくはるばるインドまで来たのに、もったいない感じもします。
帰りもシンガポール航空で、ムンバイ発 11:45、シンガポール着 19:50、フライト時間は5時間35分。
シンガポール発 6月8日 1:25、関空着が 9:05、フライト時間は6時間40分でした。
シンガポールでの乗り換え時間が長かったのですが、フライト自体は順調でした。
機内食です。
ここまでが1食分です。
なかなか豪華です。
こっちは大阪に着く直前の朝食です。
おいしかったです。
関西空港からは船で神戸のポートアイランドに戻ってきました。
今回の旅行に同行して、言葉が完全に通じなくても、なんとかなるということがわかりました。
患者さまといっしょに世界のどこにでも行けるような気がしてきました。
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