<成長について(8)>
にこう書きました。
「 私は、医者をしていて今までたくさんの方の人生を見てきました。
重い病気や事故など、思いがけない不幸と思える境遇の中でも、感動的な生き方をされている方がおられました。
前向きに目標を持って生きていたり、周囲の人に対して感謝の言葉が絶えなかったり、すばらしい夫婦愛、家族愛の中で明るく、希望を持って生きておられたりするのです。
重い病気や事故は、苦しいこと、つらいことには違いありませんが、こんな経験を通されたからこそ人間としてさらに大きく成長したと言えると思うのです。
人は一生、死ぬ瞬間まで成長を続けるのだと思います。
人はすべてが順調な順境の時にも、成長するのでしょうが、逆境の中では大きく、飛躍的に成長できる可能性があるのだと思います。
」
私は、尼崎医療生協病院の緩和ケア病棟で1年間働き、主治医として約100名の患者様の最期に立ち会いました。
また、こひつじクリニックは、緩和ケア内科も標榜していますので、癌の末期の方もたくさん担当してきています。
癌の末期になると、人生が激変します。
今まで、何の不自由もなく、楽しく生きてきたのに、次第に食事がとれなくなり、どんどん体力が落ちていき、どんどんやせていきます。できることが少なくなっていき、人に助けてもらわないと生活できなくなっていきます。いやでも、自分の死期が近づいていることを思い知らされます。
このような状況は、この上なく悲惨な状態とも考えられます。
でも、このような状況に至ると、人は、自分自身を見つめ直し、自分の人生をふりかえります。家族や親しい人と親密な話ができるようになったりします。謝罪や感謝など、心の深いところからの話ができたりします。元気な時には希薄な人間関係でしかなかったのに、末期の状態になることによって、和解が進み、絆が強まり、親密な人間関係になっていくのです。病気を持ちながら、共に生きていくことによって、お互いにめざましく成長するのです。
癌の末期の方が、みんながみんな、こんなふうにめざましく成長するというわけではありませんが、けっこうな割合でこうなっているように思います。
癌に限らず、だんだんと死に近づくという時期は、想像もしたくない、避けたいようなものかも知れません。でも、この時期は、その人にとって、極めて貴重で重要な時期なのです。
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