聴診は象徴のようなものであって、実用的な価値は少ない。と思っていた。
医師にとっての聴診器は、武士にとっての刀のようなものです。
一般の人や患者さんにとっても、聴診器は医者のシンボルのようなものなのではないかと思います。
一応、私も聴診器は象徴的な意味で大事なものだと思っていました。
でも、実際には、聴診で得られる情報は、案外少ないものだと私は感じていました。
病院勤務医時代には、聴診で少し異常を感じたら、気軽に胸部のレントゲン写真をとったり、腹部の超音波の検査をしたりなどして、もっと詳しい情報を得るようにしていました。
聴診で得られる情報より、超音波検査やレントゲン写真で得られる情報のほうがはるかに多いのです。
だから、病院勤務医時代には、私は、診療の際に一応は聴診はしていました。
でもあまり聴診には重きをおいておらず、おざなりな感じでした。
聴診をしないと、まともに診察したと患者さまから思ってもらえない。
私は、おざなりながらも診察の際に聴診はしていました。
でも、医者は、聴診なんかより、レントゲン検査なり、超音波検査なりの方が、情報が多く、有用だということを知っています。
だから、聴診をあまりしないような医者もいます。
でも、患者さまの感じ方はだいぶ違うようです。
ちょっと聴診するだけでも、ずいぶんありがたがってくださることがあります。
反対に聴診や体に触れる診察をしなかったりすると、かなり不満に感じられるようです。
そのような不満や愚痴を、患者様やご家族が話されるのを時々耳にします。
そういう意味でも、聴診は大事なものだと言えます。
緩和ケア病棟で聴診の重要性に気づいた。
私は、2012年4月から2013年3月まで尼崎医療生協病院の緩和ケア病棟で勤務しました。
病院によっても違いはあると思いますが、緩和ケア病棟ではほとんど検査をしません。
治療方針に影響を与えない検査はしないというのは、医療における一般的な原則ではありますが、緩和ケア病棟では特にその原則が重視されます。
緩和ケア病棟では、よほどのことがないと超音波検査であれ、レントゲン検査であれすることはないのです。
だから、少ない情報しか得られないものではあるのですが、聴診の重要性が増すのです。
だから、おざなりではなく、ジェスチャーでもなく、真剣に、注意深く聴診をするようになりました。
注意深く聴診すると、肺の状態、胸水の状態、心臓の状態、腸の状態などが、それまでよりもわかるようになってきました。
病院をやめて、訪問診療など、病院の外で診療をするようになると、なおさら聴診が重要になります。
病院の外では、レントゲン検査は不可能ですし、超音波検査も原則的にはできません。
血液検査をしても、病院なら1時間もすれば結果が出たのですが、病院の外では検査をしても、結果が出るのは1〜2日後になります。
何か患者さまの体調に異常があった時に、それがどのくらい重症な状態なのか、どのくらい緊急性のある状態なのか、自分の五感で判断するしかありません。
いやでも、真剣に診察します。
視診、触診、聴診などで、可能な限りの情報を集めようとします。
今では、こひつじクリニックの在宅での診療でも、病院なみの超音波検査ができるようになりました。レントゲン検査の導入も検討段階に入っています。
でも、やっぱり聴診はひとつの重要な診察手段です。
聴診器なんて、高くても安くても同じだと思っていたが・・・
この4月に、その超音波検査をしてくれる検査技師がこひつじクリニックに入職しました。
彼が、いい聴診器を持っていました。
私は、緩和ケア病棟などの経験を通して、聴診の重要性については、よく認識するようになりました。
でも、聴診器はどれでもいっしょだと思っていました。
聴診器にも、高いものから安いものまでいろいろあります。
私は、いつでもかなり安めの聴診器を使っていました。
でも、ちょっとした事情があって、その検査技師が使っていた高級聴診器を借りて使う機会がありました。
すると、今まで使っていたあまり高くない聴診器で聞こえる音と比べて、全然違う音が聞こえたのです。
モノラルとステレオぐらいの違いです。
小さい音でもはっきり聞こえるし、今までは聞こえていなかった音の世界が広がる感じでした。
微細な音の違いを聞き分けられるような感じでした。
高級聴診器って、すごい。
これを使わない手はないと思いました。
さっそく、ネットで探して買いました。
買ったのはこれです。
この聴診器を使って日々の診療をがんばっています。
たまには高級品も試さないと・・・
私は、安さが正義、安いのが一番だとふだん思ってます。
関西人の性質で、いかにいいものを安く買うかということに喜びを感じるようなところがあります。
Yahoo オークションとか価格コムとか大好きです。
でも、本当に価値のある高級品も試してみるようなことも、時々は考えていかないといけないなと思いました。
コメント