人をさばいてはいけません。(その1)

<自分の強さは過大評価する傾向がある。>

 私は外科医でもあります。
 医者になって最初の数年はたくさんの種類の手術をおぼえ、いろいろな手技を体得しました。
 手術の勉強のために熟練した外科医がする手術をビデオなどでみる機会が時々ありました。
 熟練外科医の手術は美しいですよ。
 熟練外科医の手の動きは、意外にゆっくりです。ゆっくりなのに無駄がなくて、短い時間で手術は終わってしまうのです。
 よく「大胆かつ繊細」と言いますが、重要かつ丁寧な操作が必要な場面では、本当に丁寧に、反対に、大胆に進めていい場面では、そんなにやっていいのと思うぐらい大胆だったりします。経験の少ない外科医とは違って、メリハリがあるんです。

 手術だけでなく、外科医はいろいろな手技もします。点滴を入れたり、中心静脈のカテーテルを入れたり、胸やおなかに管を入れたり。

 手術でも、手技でも、上手な人がやっているのを見ると、実に簡単そうに見えます。
 簡単だからすぐにできるわと思って、実際に自分でやってみると、全然うまくいかなかったりします。
 上級者は、たくさんのうまくいった経験や失敗を通して、微妙なコツを体で覚えていて、それが自然に実践されるので美しく、速く、上手にできるんだと思います。

 みなさんも実際にはうまくできないのに、どうせ簡単にできるだろうと考えてしまうことがあるかも知れません。
 職場などで自分より3〜5年ぐらい経験のある先輩がやっていることを見て、「簡単、簡単」と思ったのに、実際に自分でやってみたら意外にうまくいかない。
 こういう時には、自分の強さを過大評価していると言ってもいいかも知れません。。

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